「カチカチ…チーンの時代が、AIより大切になる理由」@高橋那波美


◆ AI時代にこそ、アナログが見直される理由

最近、教育の現場でも、創作の世界でも、
ワープロやタイプライターの価値が静かに戻ってきている。
それは単なる“レトロブーム”ではなく、
AIが当たり前になった今だからこそ、
人間の言葉や思考を守るために必要な動きなのだと思う。

AIは便利だ。
速いし、整っているし、すぐ答えをくれる。
でもその一方で、
子どもたちの「自分で考える力」や「自分の言葉」が薄くなる危険もある。

大人は仕事量が多いからAIを使う意味がある。
でも子どもは、まだ基礎を育てている途中。
そこにAIが入り込みすぎると、
“考える前にAIに聞くクセ”がついてしまう。

だからこそ、
5W1H(+2H)という思考の型を先に育てることが大事だと感じている。
いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どうやって。
どれくらい、どれくらいの頻度で。
この順番を自分で組み立てられる子は、
AIを使っても自分の言葉を失わない。


◆ ワープロは「自分の言葉を守る道具」

ワープロは、文面だけをそのまま受け止めてくれる。
波線で「違う」と指摘してこないし、
言い換えを勝手に提案してこない。
だから、書いた文章は100%自分の言葉のまま残る。

パソコンは便利だけれど、
AIが文章に口を出してくる。
子どもにとっては、
“AIの言葉のほうが正しい”と思い込んでしまう危険がある。

ワープロが見直されているのは、
自分の言葉を守るための安全な環境だからだ。


◆ タイプライターは「思考そのものを鍛える道具」


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タイプライターは、もっと原始的で、もっと強い。
カチカチ……と打つ音。
行の端で鳴るチーン。
ガシャッと戻すあの動作。

あのリズムは、
“書くことそのものが儀式になる”瞬間だ。

書き直しが大変だから、
打つ前にしっかり考える。
英語を書くときは、語順を頭で組み立ててから打つ。
スペルも自分で覚えるしかない。

だからタイプライターは、
英語教育にも向いていると言われている。
リズム、語順、スペル、文の呼吸。
すべてが身体に入ってくる。


◆ そろばん暗算は「頭の中で世界を動かす教育」

そろばんの暗算ができる子は、
指を動かさなくても 頭の中にそろばんの珠(たま)が浮かんでいる

珠の位置、動き、数の変化。
それらをすべて、頭の中で再現しながら計算している。

これは単なる計算ではなく、
“見えない世界を頭の中で動かす力” を育てる学びだと思う。

  • 珠をはじく感覚を記憶する
  • 数の流れをイメージで追う
  • 計算の過程を物語として理解する

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この力がある子は、
AIに頼っても思考が崩れない。
なぜなら、自分の頭で世界を再現する土台があるから。

そろばん暗算は、
AI時代にこそ見直されるべき「思考の筋肉」を育てる教育だと感じている。


◆ 藤井聡太が教えてくれる「頭の中で物語を描く教育」

将棋の藤井聡太さんが幼いころから続けてきた練習は、
ただの将棋の勉強ではなく、“物語を頭の中で描く教育”そのものだった。

詰将棋では、盤を見ずに符号だけを聞いて局面を想像し、
「もしこう指したら、次はこうなる」という未来の流れを
物語のように頭の中で再生していく。

棋譜並べでは、過去の名局という“物語”を追体験し、
一手一手の意味を自分の言葉で理解していく。

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まるで写経のように棋譜を書き写しながら、
局面の流れを深く読み取っていく。

藤井さんの強さは、
AIではなく、こうした アナログの思考訓練 によって育ったものだ。

これは、いまの教育が失いかけている
「頭の中で物語を描く力」そのもの。

AIに答えを聞く前に、
自分の頭で“流れ”を組み立てる力。
これがあるからこそ、AIを使っても自分の言葉を失わない。

鈴鹿市の教育に必要なのは、
まさにこの“思考の土台を育てる順番”だと思う。


◆ 「最新技術」と「アナログ」を使い分けるという生き方

ある海外ドラマの登場人物に、
仕事では最新のパソコンを使いこなしながら、
小説はタイプライターで書く人がいる。

速さが必要な仕事はデジタル。
深さが必要な創作はアナログ。
その使い分けが、とても理にかなっている。

わたし自身は「自分もタイプライターで書きたい!」とは思わなかったけれど、
あの世界観には、どこか憧れがあった。
カチカチ……チーン……
あの音が、書くことを特別なものにしてくれるから。


◆ AI時代の教育に必要なのは「順番」

AIを入れること自体が悪いわけではない。
ただ、順番を間違えると、
子どもたちの思考が育たない。

  1. まずは5W1Hで考える力を育てる
  2. 自分の言葉で書く経験を積む
  3. その上でAIに“補助”をさせる

この順番が守られれば、
AIは子どもを弱くする道具ではなく、
強くする道具になる。


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